【眼科コラム】近視について (2021年3月1日)
近年、先進国やアジア各国では、近視になる子供の割合が爆発的に増えています。小学校入学前から起こる強い近視には、遺伝が強く影響しますが、小学校入学後に起こる近視には環境(屋外活動時間や、近くを見ている時間)が影響し、生活環境の変化が近視人口の増加の原因の多くを占めると考えられます。
近視の進行(眼軸長の延長)は体の成長と同じ時期に起こり、成人になる頃に近視進行が止まります。何か気をつけていれば近視の進行を防げる、というものではなく、近視の進行は体が成長する過程で、誰でも必ず、自然に起こるものです。環境が大事とは言え、遺伝や成長の影響が大きいので、スマホの見過ぎや勉強のし過ぎは、近視の進行する要因の1つではあっても、その主な原因ではありません。低年齢で近視を発症すると、近視が強くなりやすく、近視が強ければ強いほど、他の眼の病気を発症するリスクが高まることが報告されているので、成人になる前に近視の進行をなるべく抑えることは、生活の質を改善させたり、他の眼の病気の発症を予防するという点で大きな意義があります。
注:近視の度数が強い強度近視と、近視が原因で失明に至る病的近視とは明確に異なります。病的近視には遺伝的な要因が強く関与するもので、通常の近視が進んで病的近視になるわけではありません。
以下、エビデンスがある程度集積されている近視抑制治療について解説します。
1. 屋外活動時間を増やす
屋外活動時間の短さが近視進行と関連することは世界中の研究で明らかにされています。特に、小学校中高学年時(中学受験前の時期)の屋外活動時間がその後の近視進行に最も影響すると考えられていますので、この時期の外遊びはとても重要です。長時間にわたって直射日光を浴びる必要はなく、屋外であれば日陰で2時間程度過ごすだけでも、近視の進行を予防する効果があるとされています。 屋外活動が近視進行を予防する理由として、太陽光に含まれるバイオレットライトが近視進行を抑制する可能性(バイオレットライト仮説)が種々の研究で示されています。窓ガラスや眼鏡、コンタクトレンズは可視光の大部分を透過しますが、バイオレットライトを透過しないことに注意が必要です。
2. 低濃度アトロピン点眼
低濃度アトロピン点眼は、アジア各国の研究により近視進行を抑制することが示されています。点眼だけで特段のリスクがなく簡便に近視進行を抑えることができるものの、近視進行が大きい年齢で低濃度アトロピン点眼を中断するとリバウンドが生じるという報告もあるため、数年以上の長期間は点眼を継続することを推奨します。日本では未承認であるため、当院では自由診療として取り扱っています (マイオピン、2021年4月~)。
3. オルソケラトロジー(ナイトレンズ)
オルソケラトロジーは就寝時のみ装用することで近視を矯正する特殊なコンタクトレンズです。日中は裸眼で過ごすことができ、さらに近視進行を抑制することが多くの研究で示されています。眼の中にレンズを入れることができる年齢であれば装用可能ですが、レンズを清潔に取り扱うことが大前提となります(感染症などのリスクは通常のコンタクトレンズと変わりません)。また、低濃度アトロピン点眼と同様、近視進行が大きい年齢で使用を中断するとリバウンドが生じる可能性があります。日本では近視矯正治療としては承認されていますが、近視進行抑制治療として承認されているわけではありません。また、オルソケラトロジー自体が保険適応外なので、当院では自由診療として取り扱っています。
※低濃度アトロピン点眼やオルソケラトロジーを早期に中止してしまうと、リバウンドが生じる可能性があります。無治療の場合よりも近視が悪化するということではありませんが、せっかく治療して得られた効果が小さくなってしまうことが懸念されます。
4. 近視進行抑制コンタクトレンズ/眼鏡
欧米では、近視進行を抑制する効果が検証され、承認されているコンタクトレンズや眼鏡がありますが、オルソケラトロジーと比較するとあまりその効果が高いとは言えません。日本では未承認であり、当院を含め日本で取り扱っている医療機関はあまりありません。
5. サプリメント
近視進行を抑制するサプリメントについて、科学的なエビデンスレベルが高いものはありません。一部のサプリメントは中止するとリバウンドを生じることが知られています。
当院には、大学で臨床・研究に従事している医師が在籍しております、お悩みの方はお気軽にご来院ください。
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