涙小管炎
概要
涙小管炎は、涙を目の表面に供給する涙小管が炎症を起こす疾患です。この炎症は、主に細菌による感染が原因で起こります。涙小管炎は、一般的には目やにの持続や、結膜炎としての治療に抗菌薬点眼が効かない場合に考えられる病態であり、多くの場合、誤診されやすい疾患です。実際、内科学のバイブルであるハリソン内科学では「most misdiagnosed disease」として記載されており、その診断と治療は専門的な知識を要します。
症状
- 目のかゆみ、異物感
- 目やにの過剰分泌
- 内眼角の発赤、腫れ
- 内眼角を押すと膿や結石が出る
- 涙点の開大
涙小管炎の特徴的な症状には、内眼角周囲への圧迫によって「菌石」や黄色い顆粒状の物質が涙点から押し出されることがあります。この他にも、涙点の拡大、眼脂、流涙、腫脹、発赤、掻痒感など、多岐にわたる症状が報告されています。これらの症状は結膜炎やものもらい(霰粒腫、麦粒腫)、涙囊炎と似ており、正確な診断を難しくしています。
原因
- 細菌感染(主にブドウ球菌、連鎖球菌など)
- ドライアイ治療で使用するプラグ
- 女性ホルモンの影響
涙小管炎の原因は多岐にわたりますが、Actinomyces、Staphylococcus、Streptococcusなどの細菌が主な原因として知られています。特に女性に多い疾患であり、女性ホルモンの作用や化粧品の使用が関与している場合もあります。また、ドライアイの治療で用いられる涙点プラグが原因で発症することもあります。
治療
- 抗菌薬の点眼・全身投与
- 涙小管のマッサージ
- 温罨療法
- 涙小管の切開術、搔爬術(結石除去)
涙小管炎の治療には、抗菌薬の投与による保存的治療が一般的です。さらに、温罨、マッサージ、涙洗いなども補助的に行われますが、これらの方法だけでは約80%の患者が十分な改善を見せないと報告されています。菌石が抗菌薬の効果を妨げるため、早期診断と迅速な外科的治療の重要性が強調されています。具体的には、涙小管切開術や涙小管搔爬などの手術が効果的です。
対策
- 清潔な生活環境の維持
- ドライアイ対策(人工涙液)
- 眼科での定期検査
- 細菌検査に基づく抗菌薬選択
涙小管炎を予防するためには、目の衛生管理に注意することが重要です。化粧品の使用に際しては、眼に対する刺激が少ない製品を選び、使用後はしっかりと洗い落とすことが勧められます。また、ドライアイの症状がある場合には、適切な治療を受けることで、涙点プラグによる合併症を防ぐことができます。
涙小管炎は再発しやすく、治療が難しい疾患です。しこりや目の異常を感じたら眼科受診が重要です。早期療法で重症化を防ぎましょう。
医療法人 慶眼会 横浜けいあい眼科 和田町院
診療時間
午後 10:00〜13:00,午後 14:30〜18:00
アクセス
Google Mapで確認する〒240-0065
神奈川県横浜市保土ケ谷区和田1-11-17 2F
相鉄線和田町駅から徒歩3分