【眼科コラム】流涙症について (2021年10月1日)
<流涙症とは?>
目が過剰な涙で常に潤んでいたり、涙が流れ出て止まらないような状態をいいます。
<そもそも涙の役割とは?>
涙は目の表面を乾燥から防いだり、感染から目を保護したり、酸素や栄養を供給したりしています。涙は主に涙腺から分泌され、10%は蒸発し、90%は涙道を通って鼻から喉へと排出されます。
<流涙症の原因は?>
大きく3つに分類できます。
1. 機能性流涙
目の周りの筋肉のゆるみによる排出障害(眼輪筋の収縮が弱まり、涙小管・涙嚢への作用が失われることが原因)で、目の病気や涙道障害がないのに涙が出る場合があります。訴えの多くは、「風に当たると涙がたくさん出る」、「光を見ると涙が止まらない」などが挙げられます。原因として、自律神経の乱れ(加齢、睡眠不足、ストレスなど)、顔面神経麻痺などが関与していると予想されます。
2. 目に病気がある場合
異物・結膜炎・角膜炎・逆さまつげ・ドライアイなどがあると刺激に対して、過剰に反応してしまい、涙が出やすくなります。 異物(花粉や埃、砂など)が入ると、涙を出して異物を排除する働きがあります。菌やウイルスも同様に異物であり、結膜炎や角膜炎を発症し、痛みやかゆみ、眼脂と一緒に涙が出て流涙症になります。また、逆さまつげなどが目をつついているような時にも、刺激で流涙が起こります ドライアイで流涙になるのはおかしいと思われるかもしれませんが、通常、目の表面はしっかりと涙の層で覆われており、この涙の層が薄い状態(ドライアイ)では、刺激に反応しやすくなってしまうため、流涙症の原因となる場合があります。
3. 涙道障害を起こしている場合
涙の通り道である、眼表面・涙点・涙小管・涙嚢・鼻涙管までのどこかで閉塞がおこると涙が正常に排出されず、涙っぽくなります。 結膜に皺ができる結膜弛緩症では、下瞼に乗るはずであった涙がたるんだ結膜の上に乗ってしまったり、涙の流れが悪くなることで流涙症状を起こします。皮膚と同じように、加齢とともに皺のできる高齢の方では、結膜弛緩症が原因の流涙症がよく起こります。 また、瞼は瞬目(まばたき)をすることにより、涙を送り出すポンプの役割をしていますので、瞼が緩む眼瞼内反症・眼瞼外反症でも涙が溜まり、流涙症を起こします。 しかし、涙の流出過程の問題の多くは、これらの眼表面の疾患だけでなく、涙道である鼻涙管が狭窄ないし閉塞することにより起こります。
<流涙症の治療は?>
基本は原因疾患を同定し、治療することが第一選択となります。
・異物:取り除く
・結膜炎・角膜炎:点眼や軟膏による原因菌やウイルスの治療
・逆さまつげ:定期的に抜毛、あるいは睫毛内反手術
・ドライアイ:点眼、涙点プラグなど
・結膜弛緩症:点眼、たるんだ結膜の焼灼または切除
・眼瞼内反・外反:眼瞼手術
・涙道狭窄や閉塞:涙管チューブ留置、涙嚢鼻腔吻合術
<HOT トピック:結膜弛緩症>
結膜弛緩症は、ドライアイや流涙症の原因になり、患者さんのQOLを低下させる非常に厄介な疾患です。
点眼加療で涙のバランスの均衡を取れず、流涙などの症状が続いてしまう場合は、たるんだ結膜に対する焼灼あるいは切除を躊躇せずに実施することをお勧めします。
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